2026年7月28日に起きた熊本の地震から、3日が経ちました。

いまも避難所で夜を明かしている人が、1万人近く。

 

テレビで体育館の映像が流れるたび、私はいつも同じところで目が止まってしまいます。

床にシートを敷いて、そのまま横になっている人たちの姿です。

 

正直に書くと、私はあそこで眠れる気がしません。

知らない人が何十人もいる部屋で、明かりのついたまま、寝顔を見られながら眠る

体力の問題というより、気持ちのほうが先に参ってしまいそうなんですよね。

 

防災リュックの中身は、これまで何度も見直してきました。

水、食料、モバイルバッテリー、常備薬。

それなのに「どこで寝るか」だけは、一度も考えたことがなかったんです。

今回は、後回しにされがちな避難所のプライバシーの話をします。

そして、それを自分で用意しておくという選択肢についても。

避難所は10年変わらない

今回の熊本の被害を数字で見ると、停電が約4万8000戸、断水がおよそ8万4000戸でした。

道路も新幹線も止まり、空港も閉じました。

ただ、避難所の話題になると、数字よりも先に出てくる言葉があります。

「10年前と何も変わっていない」です。

青いシートに毛布とマットが仕切りなく並び、リュックや水が置かれた無人の体育館

2016年の熊本地震のとき、体育館の雑魚寝が問題になりました。

2024年の能登半島地震でも、同じ指摘が出ています。

そして2026年のいま、また同じ言葉が並んでいるわけですね。

 

災害の支援には、TKBという言葉があります。

トイレ、キッチン、ベッドの頭文字で、この3つがどれだけ早く整うかで避難所の質が決まるという考え方です。

今回の報道でも、発災から48時間を過ぎてもTKBが整っていない避難所があると伝えられました。

 

倉庫に段ボールベッドの在庫はあるのに、まだ配られていない

体育館にエアコンがなく、あっても停電で止まってしまう。

34度前後の暑さのなかで、建物に入らず屋外で夜を明かした家族もいたと聞きます。

 

海外と比べられることも多いんですよね。

台湾では地震の当日のうちに、家族ごとの個室ブースが避難所に並びました。

イタリアには、発災から48時間以内にテントやトイレを届ける仕組みがあるとされています。

 

ただ、ここで「日本は遅れている」と嘆いてみたところで、今夜の寝床は変わりません。

仕組みが動くには、何年もかかります。

そして災害のほうは、その何年かを待ってくれない

だから私は、待つ以外の方法を考えることにしました。

女性が感じる怖さ

ここからは、書くかどうか少し迷った話です。

でも、家に妻や娘、お母さんがいる人にこそ知っておいてほしいので、そのまま書きますね。

夜の校舎の外廊下。非常灯が1つだけともり、右奥の校庭に仮設トイレが並ぶ

内閣府が出している防災のガイドラインに、こんな一文が載っていました。

「国内でも過去の災害時において、DVや性暴力が発生していることが明らかになっています」

ネットの噂ではなく、国が公式に認めているということです。

 

東日本大震災のあと、被災地の支援者や専門職に聞き取りをした調査があります。

そこで報告された暴力の事例は82件で、うち29件が性暴力やわいせつ行為、性的な嫌がらせでした。

誤解しないでほしいのですが、これは発生件数ではありません。

調査そのものが「数量を把握するための調査ではない」と断っていて、支援者の目に届いて報告された分だけの数字

つまり、実際にはもっとあった可能性が高いということになります。

 

気が重くなるのは、その場所と相手の内訳のほう。

暴力がふるわれた場所として避難所が挙がった事例が19件ありました。

加害者との関係でも、「避難所の住人やリーダー」が19件を占めています。

物資の配分に権限を持つ立場を利用した性的な搾取まで、報告のなかに残っていました。

 

見知らぬ誰かが忍び込んでくる、という話ではないんですよね。

同じ屋根の下にいる、顔を知っている人から

だから声を上げにくいし、上げたあとも同じ場所で暮らし続けることになります。

 

内閣府のガイドラインには、避難所のチェックシートも付いていました。

そこには「暴力防止・安全の確保」という項目が、独立して立っていました。

並んでいるのは、こんな内容です。

  • 就寝場所や女性専用スペースへの巡回警備
  • 暗がりをなくすための照明の増設
  • 防犯ブザーやホイッスルの配布
  • 女性や子どもは2人以上で行動する
  • 女性トイレと男性トイレは離れた場所に置く
  • 屋外トイレは暗がりにならない場所に置く

 

ここまで具体的に書かれているのは、それが必要だと分かっているからにほかなりません。

裏を返せば、これが整っていない避難所では、自分たちで身を守るしかない。

 

夜のトイレが遠くて暗ければ、女性は行くのをためらいます。

ためらえば、水分を控えるようになる。

断水の記事でも書いた、まったく同じ構図がここでも起きるわけですね。

 

着替える場所がない、授乳を見られる、生理用品を人前で受け取る。

ひとつひとつは小さく見えても、それが何日も続けば確実に削られていきます。

布一枚でも仕切りがあるかどうかで、安心の度合いはまるで違う

そう考えると、テントという道具の意味が変わって見えてきませんか。

家族を守る『個室』の備え

ここで、はっきり書いておきたいことがあります。

国や自治体の支援を、あてにして待たないほうがいいということ。

冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、責めたいわけではないんです。

体育館の中央通路の左右に、白とグレーのテントが等間隔で整然と並ぶ

パーティションや段ボールベッドを備蓄する自治体は、確実に増えています。

支援物資も、時間はかかっても必ず届く。

ただ、それが自分の家族の分まで回ってくるかどうかは、まったく別の話なんですよね。

 

避難所に1万人がいるとして、数百セットの間仕切りが届いても行き渡りません。

配られる順番を、こちらで選ぶこともできない。

「配られたら使おう」と待っていると、配られなかったときに打つ手がなくなります

 

ちなみに、避難生活に必要な広さの国際的なめやすは1人あたり3.5平方メートルです。

スフィア基準と呼ばれるもので、内閣府も2024年12月にガイドラインへ取り入れました。

4人家族なら14平方メートル、畳にして8畳ちょっと。

体育館でこの広さが自分たちに回ってくるかを考えると、待つ側でいるのは分が悪いと感じます。

 

そこで出てくるのが、個室は自分で持っていくという考え方。

室内で使える防災テントには、活躍する場面が3つあります。

  • 避難所の体育館の中に立てて、家族だけの空間を作る
  • 家の倒壊が心配なとき、庭先や駐車場に立てて敷地内で過ごす
  • 在宅避難のとき、部屋の中に立てて寝室として使う

 

2つめは、余震で落ちてくるものがない場所を選ぶのが前提。

3つめは意外かもしれませんが、テントの中は体温でこもるので、暖房の使えない冬にも効くんです。

 

選ぶときに見るところは、次の4つ。

  • 高さ…中で立って着替えられるか(150cmと180cmは別物)
  • 広さ…何人で寝るか
  • 設営…ワンタッチで立ち上がるか
  • 床と場所…マットが付くか、屋外でも使えるか

 

とくに見落としやすいのが、高さです。

150cmだと座って過ごす前提になるので、着替えのたびにかがむことになります。

180cmあれば、中で立てる。

プライバシーを守るための道具なので、ここを削るともったいないと思うんですよね。

 

ひとつだけ、避難所で立てるときの心得も書いておきますね。

通路や非常口をふさがない場所を選び、運営の受付にひと声かけてから立てる。

これだけで、周りとの摩擦はほとんど起きません。

 

それとこれは、会社や自治会、町内会でまとめて備えるのにも向いています。

1つ2つでは足りませんが、倉庫に何セットか入れておけば、いざというときに配る側へ回れますからね。

かさばるものがネット注文で玄関先まで届くのも、正直ありがたいところ。

おすすめの防災テント3選

ここからは、実際に選べる3タイプを見ていきます。

家族の人数と、置き場所の余裕で決めるのがいちばん失敗しません。

まず1台の3〜4人用

最初の1台として現実的なのが、この標準サイズです。

広さは200×200cmで、高さが180cm

中で立って着替えられるので、さっき書いた高さの条件をきちんと満たしています。

 

スチールフレームのワンタッチ式で、重さは5kg。

収納バッグが付いていて、レビューでは「フレーム構造で組み立てが簡単」という声が並んでいます。

評価は87件で4.48と、実際に使った人の手応えも悪くありません。

 

価格は9,900円から(2026/7/31時点)。

自治体での採用実績があり、災害用品の補助申請にも対応しているとのこと。

迷ったらここから、と言えるバランスです。

 

 

家族に余裕の超大型

家族が多い場合や、荷物も一緒に入れたい場合はこちら。

240×240cmという広さで、高さは同じく180cmあります。

4〜5人が横になれるので、子どもが2人3人といる家庭でも窮屈になりません。

 

設営は1分とされていて、折りたたみ式。

間仕切りとしての使い方も想定されているため、避難所の一角に置いても浮かないんですよね。

価格は15,800円(2026/7/31時点)で、こちらも公的補助金の対象という記載がありました。

 

広さは、そのまま気持ちの余裕に変わります。

荷物を外に出しっぱなしにしなくていいのも、地味ですが効いてくるところ。

 

マット付きの兼用型

3つめは、床までセットになったタイプです。

210×210cmで高さは150cm、重さは約4.8kg。

アルミマットが付属していて、体育館の硬くて冷たい床を直接感じずに済みます。

 

ただし高さは150cmなので、中で立つのは難しい。

そのぶん屋内外の兼用として作られていて、キャンプでも使えるのが強み。

ふだんの週末に一度立ててみて、家族に慣れてもらう。

そういう使い方ができる道具は、防災グッズとして長生きするんですよね。

 

 

一緒に備えたい3つ

テントと一緒に持っておくと、安心の質が変わるものを3つだけ。

どれも、ここまで書いてきた困りごとに直接効くものです。

トイレの個室セット

簡易トイレと、それを囲うテントのセット。

テントは120×120cmで、高さが190cmあります。

ここでも中で立てるため、トイレだけでなく着替えテントとしても優秀。

 

ポップアップ式なので、袋から出せば勝手に立ち上がります。

専用ポットと処理袋、それに凝固剤が12個ついてくるのもありがたいところ。

収納時は33×29×30cmまで小さくなります。

 

避難所のトイレが遠い、夜は行きたくない。

そういうときに、敷地内や自宅へ自分たちの一区画を作れるのは大きいですよね。

386件のレビューで4.32と、評価も安定しています。

 

トイレの個室。窓の外に夏の青空と入道雲。床に非常用トイレの箱・凝固剤の小袋・黒い処理袋
真夏の断水はトイレが先に限界…猛暑の被災に備える非常用トイレ2026年7月28日、熊本で震度7の地震が起きました。 その日の熊本の最高気温は、36.5度です。 7月30日の時点で断水はおよそ7...

防犯ブザー

これは、さきほどのチェックシートから持ってきました。

内閣府の備蓄リストに、女性用品として防犯ブザーとホイッスルが明記されています。

国が備蓄品目として挙げている、という事実の重さを考えてほしいところ。

 

紹介するのはパスケース型で、愛知県警と共同開発されたもの。

定期入れとして毎日使えるので、防災リュックの底で眠りません

電池はCR2032が1個で、24件のレビューで4.46。

娘さんや奥さんに1つ持たせておくのは、災害のあるなしに関係なく効く備えです。

 

給水タンク

最後は、断水とセットで必ず要るもの。

アイリスオーヤマの給水タンクで、10リットルと20リットルから選べます。

畳んでおけるタイプなので、使わないあいだは押し入れの隙間で眠っていてくれる。

 

おすすめは10リットルを人数分という持ち方です。

20リットルは満水で20kgになり、大人でも片手ではまず運べません。

10kgずつに分けて手分けすれば、4人家族の1日分もひと往復で運べる。

 

価格は1,000円で、レビューの評価は4.31(2026/7/31時点)。

備えの入口としては、いちばん軽い出費だと思います。

テントで居場所を作り、タンクで水を運ぶ。

この2つがそろうと、避難生活の見え方がずいぶん変わってきます。

 

どれも1,000円台から1万円台で、一度買えば何年も置いておけるものばかり。

使わずに済むならそれがいちばんですが、あるとないとでは心の持ちようが違います。

 

断水した台所。蛇口の先に一滴だけ残り、調理台に携帯浄水器とペットボトル。窓の外は入道雲
断水時に飲み水を作る方法|災害備蓄に『携帯浄水器』を勧める理由2026年7月28日に起きた熊本の地震で、断水がいまも続いています。 7月30日の時点で、およそ7万9,700戸。 日本水道協会と地...

まとめ

和室の押し入れ。上段に黒い収納バッグ・水タンク・防災リュック、下段に布団と備蓄カゴ

避難所にプライバシーがないという問題は、10年前から言われ続けてきました。

それでも現場は、まだそこまで追いついていません。

とくに女性にとっては、着替えや授乳やトイレといった毎日のことが、そのまま負担になります。

国のガイドラインが巡回警備や防犯ブザーの配布まで書いているのは、そこに理由があるからでした。

 

だから、配られるのを待つのではなく、個室のほうを自分で持っていく

ワンタッチのテントが1つあれば、体育館でも、庭先でも、家の一部屋でも、家族の空間が作れます。

畳んでしまえば、押し入れの隅にしまえる大きさ

 

熊本ではいまも、大勢の人が体育館で夜を過ごしています。

次にどこで起きるかは、誰にも分かりません。

家族が着替える場所に困らないかどうかは、その日が来る前の買い物ひとつで変わるのかもしれませんね。

被災×猛暑が怖すぎる…子どもを守る停電・断水・熱中症の備えまとめ「熊本で震度7」という速報を見て、最初に頭に浮かんだのは「また…?」でした。 10年前と同じ場所です。 その次に浮かんだのが、エアコ...