「Agodaからは予約しないでください」

2026年9月22日、山形県米沢市の小野川温泉にある旅館が、Xでこう呼びかけました。

予約サイトで宿を取ったことがある人なら、「契約していないのに売られている」という一文に引っかかったのではないでしょうか。

 

比較サイトでいちばん安いところを選んで、予約完了のメールも届いた。

それなのに、宿のほうでは自分の予約がきちんと伝わっていないかもしれないんです。

契約していない宿が、なぜ売られてしまうのか。

家族旅行の宿は、どこで取れば安心なのか。




旅館が訴えたAgodaの転売

声を上げたのは、小野川温泉の鈴の宿 登府屋旅館です。

9月22日の連続した投稿で、宿はこう説明しています。

当館はAgodaと契約していない。

それなのに、転売によって客室が売られていて、食事の有無や部屋タイプ、人数が食い違う予約が増えているというのです。

お客様の連絡先もわからないので、何かあったときに宿から連絡ができない、と。

 

この投稿は一気に広がり、同じように悩んでいた宿の人たちからも声が続きました。

実はこの問題、1年以上前から続いています。

2025年6月16日には、ビジネスホテルの東横インも、Agodaなどの海外サイトで空室が転売され、予約がきちんと伝わらないと注意を呼びかけていました。

観光庁も2025年3月からAgodaに改善を申し入れ、Agodaは同じ年の6月26日から、宿と直接の契約がなく、ほかの会社から回ってきた部屋の販売を一部止めています。

それから1年あまり。

今回の投稿は、宿の現場ではまだ同じことが起きているという訴えでした。

 

ただ、宿が問題にしているのは、特定の会社よりも予約が転々とする流れそのものです。

返信欄に、この件と関係のない人への心ない言葉が並んだとき、宿は「この投稿の本質は、契約していないのに売られている流通の仕組みへの問題提起です」と書き、食べ物の産地がたどれるように、宿の予約もたどれるようにしてほしいと続けています。

宿が変えてほしいのは、予約が流れていく道すじのほうなんです。




契約していない宿が売られる仕組み

宿の説明によると、いまの宿の予約には「再流通」と呼ばれる流れがあります。

旅館の鍵札がのった封筒から、手渡しのように並んだ封筒へ予約が渡っていき、紙切れがこぼれている挿絵

宿がまず部屋を預けるのは、自分が契約している予約サイト。

その部屋が、別の旅行会社や卸の会社へ渡り、さらに別の会社を経て、最後に海外の予約サイトに並ぶ。

宿の言葉を借りれば、簡単にいえば「転売」です。

 

だから、バケツリレーのように手から手へ渡るうちに、途中で情報がこぼれます。

観光業の経営を研究している専門家も業界紙で、こうした転売が10回以上重なることもあると説明していて、渡るたびに情報が粗くなり、何かあったときに誰の責任なのかもあいまいになるそうです。

宿に届く予約では、お客様の名前はローマ字、住所や電話番号は仲介した会社のもの、ということもあるんだとか。

 

宿が紹介している営業電話のやりとりも、この仕組みをよく表しています。

ある旅行会社から「新規契約しませんか」と電話があり、宿が「御社と契約していないのに、すでに当館が販売されているようですが」と返すと、相手は「直接契約なら、もっとよい条件で販売できます」と答えたそうです。

契約を持ちかけてきた会社が、もうその宿の部屋を売っていた、という話。

つまり宿から見れば、自分の部屋がどこで、いくらで、どんな条件で売られているのか分からない状態です。




宿に届かない予約の中身

では、泊まる側には何が起きるのか。

宿が挙げているトラブルはこうです。

  • 予約したはずなのに、宿に予約が届いていない
  • 予約した部屋と、宿に届いた部屋タイプが違う
  • 人数が違う
  • 食事の条件が違う
  • 宿に予約が伝わるまで数日かかる

いちばん分かりやすいのが、宿が紹介したこのチェックインの場面。

お客さんはAgodaで取ったつもりなのに、宿の画面では「楽天トラベルからの食事なしプラン」になっている。

しかも、もとは国内の予約サイトに預けた部屋が、何社かを経てAgodaに並んでいた、ということです。

 

9月28日には、海外サイトに載っていた自分の宿の情報を確かめた結果も投稿しています。

部屋の広さも写真もバスタブも違い、「定員4名なのに布団が1組」と書かれていたそうです。

 

たとえば家族旅行で、夕食つきだと思っていた宿に夕食がない。

子ども2人ぶんの布団がない。

旅先の夜にこれが起きたら、代わりを探すのは本当に大変です。

夜の旅館の和室で、座卓には湯のみと急須だけがあり、布団がひと組だけ置かれている挿絵

 

もうひとつ、宿がいちばん困ると書いているのが緊急時の連絡。

台風や事故で交通が止まり、「今日は来ないほうがいい」と伝えたくても、宿がお客さんの正しい連絡先を持っていない。

大雨の多いこの季節、これがいちばん怖いところかもしれません。




Agodaが安いときの落とし穴

とはいえ、安いサイトで取りたくなる気持ちは自然なことです。

家族4人で2泊となれば、1泊あたり数千円の差でも合わせるとかなりの額になります。

 

実際、宿自身も「海外サイトのほうが安いことがある」と認めているんです。

宿が1万5,000円で売った部屋が、海外サイトでは1万2,000円で売られていたこともあったとか。

この宿は、予約サイトに出す値段を〈公式サイトの値段に手数料を足した額〉で決めているのだとか。

本来なら公式サイトより少し高くなるはずなのに、転売の先では安く出ている。

なぜそうなるのかは宿にも分からず、逆に高く出ていることもある、と書いています。

 

つまり、表示される値段が安いのは本当でも、その部屋の中身まで同じとは限らない。

宿はこれを「安いから今回だけ、で失うもの」と呼んでいます。

夕食の有無や布団の数が違っていたら、差額の3,000円では取り戻せません。

 

もうひとつ知っておきたいのが、比較サイトと予約サイトは別のものだということです。

トリバゴのような比較サイトは、いくつもの予約サイトの値段を並べて見せてくれる入口で、実際に予約するのはその先のサイト。

Agodaは、その〈先〉にある予約サイトのほうですね。

いちばん安い値段を押すと、聞いたことのない海外の予約サイトへ飛ぶこともあります。

値段の横に小さく出ている「どこで予約するのか」の名前を、押す前に一度だけ見ておく。

それだけで、自分の予約がどの窓口を通るのかが分かります。




家族旅行の宿はどこで予約する?

では、どこで取ればいいのか。

登府屋旅館の答えは「当館の公式サイトが一番確実」です。

そのうえで、キャンペーンやポイントとの兼ね合いもあるだろうから、と契約している国内の予約サイトも挙げています。

じゃらん、るるぶトラベル、楽天トラベル、JR東日本のびゅうトラベル、日本旅行などです。

ちなみに登府屋旅館は、「三世代で楽しめる宿」を掲げる小野川温泉の宿。

これだけ話題になると、どんな宿なのか一度のぞいてみたくなった人も多いと思います。

楽天トラベルにも載っているので、公式サイトと見比べて、自分に合うほうで取ってみてください。

▶登府屋旅館を楽天トラベルで見る

 

福島の穴原温泉にある旅館の7代目も、同じ理由を書いています。

ここで大事なのは、サイトの名前より「宿がその予約を自分の画面で見られるか」です。

さっきのチェックインの話のとおり、国内の予約サイトに預けた部屋でも、何社かを経ると海外サイトに並びます。

反対に、宿と直接つながっている窓口から取れば、日付も人数も食事も、そのまま宿に届く。

見分け方はかんたんで、宿の公式サイトに載っている予約の入口を使うことです。

 

宿の公式サイトを開くと、予約ボタンの先が提携している予約サイトになっていることもよくあります。

迷ったら、公式サイトか、宿が案内している国内の予約サイトから取る。

チェックインの話でも、宿の画面にはちゃんと「楽天トラベル」と出ていました。

楽天トラベルはこの宿が契約している窓口なので、食い違いが生まれたのは、そこから先で部屋が転々とする途中だと考えられます。

宿が案内している予約サイトの中に楽天トラベルがあれば、ポイントも貯まって、予約もそのまま宿に届くわけです。

逆に、宿がAgodaと直接契約して公式サイトで案内しているなら、Agodaで取っても予約はそのまま届きますよ。

分かれ目は、その宿と契約している窓口かどうか。

 

子ども連れの旅なら、宿を探す入口から家族向けに絞っておくと、そもそもの食い違いが起きにくくなります。

楽天トラベルの家族旅行のページなら、添い寝無料やお部屋食、家族風呂のある宿から探せるので、「子どもの布団は?」「食事はどこで?」を予約の前に確かめられるんです。

▶家族で泊まれる宿を楽天トラベルで探す




予約したあとに確かめること

すでに海外サイトで予約してしまった人も、慌てなくて大丈夫です。

登府屋旅館は、来館の直前ではなく、できるだけ早めに電話で確認してほしいと呼びかけています。

伝えるのは、日付、人数、予約した名前、食事の有無、そのほかの条件です。

旅行に出かける朝、テーブルに子ども用のリュックとパンフレット、スマホとマグカップが並んでいる挿絵

 

国民生活センターも、旅行予約サイトでのトラブルの相談を受けて、2025年3月に予約前の確認を呼びかけています。

見てほしいと挙げているのは、予約サイトを運営しているのが国内の会社か海外の会社か、キャンセルの条件、そして予約確認のメールです。

海外の会社には日本の旅行業法が適用されず、サイトが日本語でも日本語で対応してもらえるとは限らないから。

 

それを踏まえて、どこで取った場合でも、出発前に見ておきたいのはこの3つです。

  • 予約確認のメールで、日付・人数・部屋タイプ・食事の有無が合っているか
  • 不安なら宿に電話して、自分の名前で予約が入っているか、連絡先がどこになっているかを確かめる
  • 「予約を確定する操作を」「支払いを」と促すメッセージが来たら、リンクを押さずに予約サイトのアプリか公式サイトから確かめる

最後の項目だけは、転売とは別の話。

9月26日には、楽天トラベルで予約した人に、海外から「予約を確定する操作をしてください」というメッセージがWhatsAppで届いた、という投稿もありました。

楽天トラベルは、予約が成立したあとに個別の連絡をすることは基本的にない、と案内しています。

予約サイトの名前をかたる連絡は、Booking.comでも観光庁が注意を呼びかけたことがあり、どのサイトで取っても起こりえるんです。

 

窓口が決まったら、あとは少しでもお得に取りたいところ。

楽天トラベルには宿ごとの割引クーポンが都道府県別に並んでいて、行き先が決まっているなら、予約の前にのぞいておくだけで同じ宿に安く泊まれることもあります。

▶楽天トラベルのクーポンを見る

 

宿は、旅行はお客様が予約した時点で始まると書いています。

何月何日に、何人で、どの部屋に泊まって、何を食べるのか。

車椅子を使うのか、貸切風呂が要るのか。

それを予約の時点から知っておきたいから、公式で取ってほしいのだそうです。

安さを比べるのと同じくらい、宿がこちらの予約を知っているかを確かめておけば、旅先で夕食や布団に困る夜はぐっと減らせますよ。