離岸流で流された親子…角田浜で子ども2人が亡くなる水難事故
8月10日のお昼ごろ、新潟市の角田浜海水浴場で、親子3人が沖へ流される事故が起きました。
ヘリコプターで救助されたものの、中学1年生の娘さんと小学3年生の息子さんは、運ばれた病院で亡くなりました。
3人は、水に浮かべて上に乗るタイプの遊具(フロート)で遊んでいて、波にあおられて海に落ちたと報じられています。
浮き輪やゴムボートと同じで、どこの海水浴場でも見かけるごく普通の遊び方でしょう。
今回は、同じ事故がくり返されないことを願って、このニュースについて書いていきます。
角田浜で起きた水難事故
8月10日の正午ごろ、新潟市西蒲区の角田浜海水浴場の沖で、「大人と子どもが流されている」と目撃した人から通報がありました。
角田浜は、角田岬の灯台をのぞむ砂浜がおよそ600メートル続く、新潟市でいちばん大きな海水浴場です。
流されたのは、市内に住む37歳のお父さんと、中学1年生の娘さん、小学3年生の息子さんの3人でした。
3人が浜に着いたのは午前10時半ごろで、お父さんと娘さんはフロートに乗り、息子さんは波打ち際で遊んでいたといいます。
夏休みに、家族で海水浴。
どこの家庭にもある、ごく普通の夏の一日だったはずです。
海上保安部によると、お父さんと娘さんの乗ったフロートが、遊泳区域より沖のほうへ流されていきました。
それに気づいた息子さんが、2人のところへ泳いでいきます。
そして、お父さんが息子さんをフロートに乗せようとした、そのとき。
波にあおられて、3人とも海に投げ出されました。
娘さんは沖で、お父さんと息子さんは岬の岩場で、それぞれヘリコプターに救助されました。
それでも、姉弟2人は運ばれた病院で亡くなっています。
3人とも、ライフジャケットは着けていませんでした。
事故のあと、角田浜は遊泳禁止になっています。
報じられている経緯は、ここまでです。
お父さんは、2人の子どもを一度に失いました。
親として、これ以上つらいことはありません。
波は30センチしかなかった
その日の角田浜の波の高さは、30センチでした。
沖のうねりは、1メートル。
膝にも届かない波と、大人の背丈ほどのうねりが、同じ海に同居していたわけです。
浜に立って見えるのは前者だけで、後者は見えません。
私たちが「今日は穏やかだね」と言っているのは、海のほんの表面的なことでしかありません。
その日は朝から、黄色い旗も上がっていました。
「遊泳注意」の合図です。
そして現場の監視員は、テレビの取材にこう話しています。
ここは離岸流がものすごく発生しやすい場所で、浮き輪で浮いていたら一発で流される、と。
離岸流というのは、岸から沖へ向かって流れていく、川のような流れです。
幅はせまいのに、大人が全力で泳いでも戻れないことがあります。
海上保安庁も「海岸線のどこでも起こる可能性がある」と言っています。
波打ち際の少し沖には、波が運んだ砂で海底が高くなっている場所があります。
その切れ目にあたるところが、砂浜の真ん中でも沖への通り道になります。
角田浜のように岬や岩場のある海岸は、それに加えて流れの通り道ができやすい地形です。
お父さんと息子さんが最後に泳ぎ着いたのも、角田岬の岩場のそばでした。
やっかいなのは、この流れの上だけ、海が静かに見えるというところ。
波が立たずに水面が暗く見えたり、泡やゴミがすうっと沖のほうへ動いていたり。
いちばん穏やかに見える場所が、いちばん流れの強い場所だったりします。
子どもを遊ばせるなら、そういう場所を選んでしまうことも理解できなくはありません。
ただ、そういう場所へフロートで行ってしまうと、突然逃げ場を奪われてしまうことがあります。
体が水の中にあれば、足を踏ん張ることも、底を蹴ることもできます。
でもフロートは水の上に置かれているので、流れに乗ったフロートは、手でこいでも戻れない速さで沖へ運ばれていきます。
しかも乗っている本人は、流されはじめたことに気づきません。
気づいたときには、浜にいる人の顔が、もう見分けられないところまで流されることになってしまう。
それが離岸流の怖さなのです。
8歳の弟は助けに向かった
波打ち際で遊んでいた息子さんは、お父さんとお姉ちゃんの乗ったフロートが遠ざかっていくのを見て、自分から沖へ泳いでいきました。
8歳なのに勇敢な行動です。
家族が流されていくのを、すぐに行動に移したこの8歳の子のことを考えると本当に胸がつまります。
息子さんが父親と姉を助けようとして溺れてしまったってことか、、、
辛すぎる。
海水浴はライフジャケット必須だよな。— たるまえ (@hiyowa_na_dr) 2026年8月10日
海上保安庁は以前から、流されたフロートを追いかけて溺れる事故が多いと、くり返し注意してきました。
でも、流されていくのが自分の家族だったら。
8歳の子に「追いかけてはいけない」と考えられるはずがありません。
お父さんも同じです。
泳いできた息子さんをフロートに乗せようとして、波にあおられました。
海に投げ出されたあとは、息子さんを抱きかかえたまま岩場まで泳いでいます。
流れの中で、2人の子どもを同時に抱えられる親はいません。
ネットには「なぜライフジャケットを着けていなかったのか」という声も並んでいました。
しかし、海水浴でライフジャケットを着けている家族は昔より増えましたが、それでもまだライフジャケットを着ている家族のほうが少数派です。
この家族も、フロートという「浮くもの」はちゃんと用意していました。
フロートがあるから大丈夫だと思ってしまうのは、この家族が特別だったからではなく、きっと私たちのふだんの姿なのかもしれません。
責められる人は、この家族の中にひとりもいません。
誰ひとり間違っていないのに、姉弟2人が帰ってこなかった。
海の事故はいつも、そうやって起きてしまうのです。
水難事故は突然やってくる
この事故が起きる2日前、愛知県の鴨山川でも、川遊びに来ていた家族が流されました。
小学6年生の息子さんが溺れ、助けに水へ入ったお父さんが、そのまま帰らぬ人になっています。
川と海、フロートのあるなし、流れの正体。
違うところを挙げればいくらでもありますが、水難事故は防ごうと思えば防げる事故でもあります。
しかし、まさかは突然やってきます。
だれかが流されて、家族が助けに向かい、助けに向かった側まで水に飲まれてしまう。
せっかくの夏休み、このような水難事故は注意しすぎるくらい注意することが大事だと考えています。
せめて子供だけでもライフジャケットの着用をさせるべきではないでしょうか。
海で子どもを守るためにできること
同じ事故を減らすために親ができることは、海でもそんなに多くありません。
だからこそ、その少ないほうを確実にやっておきたいと思うんです。
まず、浜に着いたら旗の色を見ること。
黄色い旗は「遊泳注意」の合図で、角田浜でもこの日、朝から上がっていました。
地元の人からは「あの浜の遊泳注意は、実質禁止の合図だ」という声も上がっていたほどです。
波が低く見えても、旗は沖のうねりや流れまで含めた海の状態を教えてくれています。
黄色の日は、砂遊びと足首までの波打ち際にとどめる。
せっかく来たのに、と思っても、その線引きが家族を守ります。
つぎに、フロートで沖に出ないこと。
乗るなら大人の足が着く深さまでにして、フロートが沖へ流されはじめたら、追いかけずにあきらめる。
もし家族ごと流されてしまったら、岸にいる人は泳いで追わず、119番か海の事故専用の118番へ通報してください。
海上保安庁が「流されたフロートは追いかけないでほしい」とくり返しているのも、同じ理由からです。
それから、離岸流に入ってしまったときの逃げ方も、家族で話しておきたいところ。
沖への流れに逆らって岸へまっすぐ泳ぐのが、いちばん危ない動き方です。
流れを横切るように、岸と平行に泳いで抜けるのが基本とされています。
抜けられなければ、あお向けに浮いて助けを待つ。
子どもには「浮いて待つ」の5文字だけでも、伝えておく価値があります。
お風呂やプールであお向けに浮く練習を一度させておくだけでも、いざというときの体の動きはぜんぜん違うはずです。
これはあまりにも辛すぎて言葉が出てこないな…
夏休みに川や海に遊びに行く場合はライフジャケットの着用は必須だね— poke kuma (@poke_kuma09) 2026年8月10日
そして最後が、浮くための備え。
ライフジャケットを着けていれば、流されても浮いたまま助けを待てます。
フロートとちがって体から離れないので、波にあおられても、そのまま浮かんでいられます。
子ども用なら数千円からで、海でも川でも使い回せるものがほとんどです。
体に合うサイズの見きわめ方は、こちらの記事にまとめてあります。
お盆休み、これから海へ行く家族もたくさんいるはずです。
出かける前の5分だけ、旗のこと、フロートのこと、流されたときのことを話してみてください。
その5分が、いざという場面で家族を守ってくれるかもしれません。
そして、亡くなられたお二人のご冥福を、心からお祈りいたします。